ビッグデータの時代だからこそ、より高品質なデータを
2022年09月30日
沖本 竜義
慶應義塾大学経済学部
インターネットが普及した現代、多種多様な情報やデータを容易に手に入れることができる、いわゆるビッグデータの時代となった。情報やデータは、企業のマーケティング戦略、政策立案者の政策運営など、様々な意思決定に用いられる。そのため、情報があふれるビッグデータの時代においては、正確性、信頼性などを兼ねそろえた高品質なデータに基づいて意思決定を行うことが重要となってきている。また、企業や政策立案者に限らず、個人においても、日々の購買行動においてデータを利用し、それに基づいて意思決定を実施するようになってきている。
消費者は幅広い商品・サービスに口コミサービスを利用
商品の購買やサービスを利用するにあたり、多くの消費者が口コミを重要な情報源とするようになっている。図1は、マイボイスコムが行ったネット上の口コミ情報に関する調査(第5回)から、ネット上の口コミ情報を参考にして購入・利用する商品・サービスをまとめたものである。図1からわかるように、幅広い商品やサービスにおいて、口コミ情報が使用されており、特に、家電製品やコンピュータ関連機器、旅行や飲食店、美容用品・ファッション雑貨においては、口コミの利用率が高くなっている。
また、図2は同調査から、ネット上の口コミ情報を参考にする時によく見るサイト・アプリをまとめたものである。消費者がよく利用するサイトとしては、価格comなどの価格比較サイト、アマゾンなどのショッピングサイト、食べログやぐるなびなどのグルメ情報サイトなどが挙げられている。
口コミ利用者は、口コミの品質を複数の観点から判断
それでは、消費者は、口コミを利用する際、どのように口コミの品質を判断しているのであろうか?図3は同調査からネット上の口コミ情報が信頼できると感じる場面をまとめたものである。口コミ情報の場合、口コミの件数や、多くの人が同じ評価をしているといった口コミの一致性が重要視されている。また、良い点だけでなく良くない点についても書かれていること、口コミ内容が納得できるといった妥当性や具体性、口コミをしている人に対する信頼性も重要な判断基準になっている。
データスコアから、より高品質なデータの利用・作成へ
このように、一般消費者において、購買のような意思決定をする際には、信頼性など複数の観点から、データの品質を見極めて利用していることがわかる。これと同様に、一般的な統計データも、口コミ情報の品質を判断する際に用いたような観点から品質を評価することが重要である。また、一般的な統計データに関しては、ほかの統計データと容易に比較できるかといった比較可能性や、公表のタイミングが迅速かといった即時性など、追加して考慮したほうが良い観点がある。しかし、こうした複数の観点からデータを評価し、データの品質を判定するのは時間を要し容易ではない。そのため、本マーケティング・データベースでは、データの品質を格付けすることにより 経営者、企画担当者、マーケティング担当者などが適切なデータを収集・活用できるようデータスコアを提供している。データスコアでは、統計および調査の「品質」を妥当性、正確性、即時性(適時性)、信頼性、アクセス性、比較可能性・一貫性の6個の観点から評価している(データスコアに関するより詳細な説明は、こちら(https://marketingdata.gomez.co.jp/about_datascore/)を参照されたい)。マーケティング・データベースにおいて、データスコアを提供することが、データ利用者がより高品質なデータを選択できるようにするとともに、統計作成者の高品質な統計作成に対する意識を高め、統計の品質向上に繋がることを期待したい。