フォールスコンセンサス効果と客観データの大切さ

2022年08月15日


森澤 正人
株式会社ブロードバンドセキュリティ
ゴメス・コンサルティング本部長


益々複雑化する現代社会において、心理学を経営や企画、マーケティング活動に利用しようとする試みは枚挙にいとまがありません。
例えば行動経済学の一種であるナッジ理論は、行政への活用も進んでいます。厚生労働省では、がん検診の受診率向上を目指して、心理学を応用した取り組みで成果を上げました。
参考:明日から使える - ナッジ理論 - 厚生労働省

がん検診のセット受診率を上げるために、がん検診を受けるか受けないかの選択肢に記入してもらうのではなく、がん検診をいつ受けるかという記入にしてもらい、さらに受けない場合にはその理由を記載してもらうようにしたところ、セット受診率は47%上昇したという例も紹介されています。

このように、人の心理を研究し、データに基づく施策を行うことは社会的にも意義があります。

さて、心理学の理論の一つにフォールスコンセンサス効果というものがあります。
直訳すると「偽の合意」であり、自分の意見はみんなも合意してくれるだろうという思い込みを指します。

自分がうなぎが好きだから、ごちそうしたらみんな喜ぶだろうとか(私の妻はうなぎの食感が苦手です)、自分は仕事を頑張って出世してお金をたくさんほしいから部下の考えも自分と同じだろうとか(私はその考えに陥りがちです)、皆さんも何の根拠もなく信じていることは多いと思います。

客観的な根拠に基づくのではなく、自分の思い込みを根拠としたずれた判断をしてしまった場合、プライベートでは人間関係の悪化、ビジネスでは成果が出ないといった結果をもたらすことになります。

これを避けるためには公平・中立的で客観的なデータを活用するしかありません。
ところが世の中には自分の直観と実データが離れている、フォールスコンセンサス効果に陥っている状況が多くあります。

例えば、「女性の多くは夫婦別姓や選択的夫婦別姓制度を望んでいる」のでしょうか?
内閣府が2021年12月から2022年1月にかけて18歳以上の男女5,000人を対象に行った調査では、「現在の制度である夫婦同姓制度を維持した方がよい」または「現在の制度である夫婦同姓制度を維持した上で、旧姓の通称使用についての法制度を設けた方がよい」との回答をしたのは、男性で73%、女性で65.7でした。夫婦別姓によって子どもにとっての好ましくない影響を懸念する声があるようです。
 

選択的夫婦別姓制度

選択的夫婦別姓制度に関する意識調査
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もう一つ別の例を挙げます。
「石油・石炭、電力、ガスなどのエネルギー消費のうち、製造業は石油・石炭を多く消費している」のでしょうか?
実際には製造業が多く消費しているのは電力が49.3%で石油・石炭は17.1%のみです。一方、非製造業では実に74.9%のエネルギー消費を石油・石炭に頼っています。非製造業こそ脱炭素の取り組みを加速させないといけないことがわかります。

燃料種別エネルギー消費量の状況(2020年度)

燃料種別エネルギー消費量の状況(2020年度)
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このようにデータをもとにした判断と意見を表明することはビジネスシーンにおいては大変重要なことです。
たしかに客観的な数値を調べるのは大変でしょう。しかしその一手間が大きな結果の差を生み出すのであり、社会生活を営む人すべてがこの感覚を持つことをお勧めします。