テレワーク導入企業が47%超と大幅に増加
2022年07月14日
沖本 竜義
慶應義塾大学経済学部 教授
2020年通信利用動向白書※1が公表され、新型コロナ拡大による「新しい生活様式」としてテレワークが大幅に普及していることがわかった(2021年6月18日)。
テレワーク普及が一層の拡大
テレワークを導入している企業の割合は47.4%。前年から27.3%ポイント増と過去例を見ない増加となり、今後導入を予定している企業を合わせると半数以上の企業がテレワーク導入を進めていることが明らかになった(図1)。
また、テレワーク導入の割合を産業分類別にみると、情報通信業が 92.7%と最も高く、業務上テレワークに切り替えが難しい部分がある運輸業・郵便業が30.4%と最も低い結果となっている(図2)。
新型コロナの影響で在宅勤務の割合が上昇
テレワークには、終日または一部の時間に自宅で業務を行う「在宅勤務」、外出中にカフェなどで作業する「モバイルワーク」、コワーキングスペースや遠隔勤務用の施設で働く「サテライトオフィス勤務」が含まれる。このうち、2020年調査ではモバイルワークやサテライトオフィス勤務が減少するなかで、在宅勤務が昨年対比36.8%ポイントと大幅に増加した(図1)。また、昨年までテレワークの主要形態であったモバイルワークの割合を在宅勤務の割合が超過し、87.4%と最も高い導入割合を記録した(図3)。
テレワーク導入企業の導入目的についても新型コロナによる影響を大きく反映する結果となっている。これまでテレワーク導入は、業務の効率性の向上や勤務者のワークライフバランスの向上といった目的が主であった。しかし、2020年調査では「地震、台風、大雪、感染症の流行など非常時事業継続に備えて」という目的が 68.3%と最も高く、他の目的の割合は軒並み減少する結果となっている(図4)。
テレワークの効果はおおむね良好だが中小企業に課題あり
テレワークの効果については、「非常に効果があった」「ある程度効果があった」の両者を合わせると7割以上の企業がテレワーク導入に効果があったとしている。しかし、新型コロナ以前と比較すると、「非常に効果があった」企業の割合は10%ポイント近く減少しているほか、「あまり効果がなかった」「マイナスの効果があった」「効果はよくわからない」が25%強を占めるなど、新型コロナ禍において企業が業務継続に苦心している様子が浮かび上がる結果となった(図5)。
なお、総務省は2020年通信利用動向白書の公表に先立ち、「テレワークの最新動向と総務省の政策展開」というレポートを発表している。このレポートによると、新型コロナ拡大を背景にテレワークが大幅に拡大しているものの、企業規模や地域によって格差が依然大きいことが指摘されている。特に中小企業においては、一度テレワークを導入したもののとりやめた企業が半数にのぼるなど、システム高度化、労務管理といった観点から、地方・中小企業におけるテレワーク導入のハードルが高いことが伺われる。
テレワーク定着は2021年調査に注目
働き方改革や地方創生といったメリットをもたらすと言われているテレワーク。2020年調査では、新型コロナ拡大を背景に全体ではテレワーク導入が大幅に推進されたようにみえる。しかし、地方や中小企業におけるテレワーク導入の難しさも浮き彫りになる中、テレワーク導入やその定着が今後うまくいくかについては、新型コロナの影響が一巡する2021年調査の結果がその分かれ目となるといえるだろう。
注
1 通信利用動向白書は、総務省による調査。通信利用動向白書(企業編)は特に企業における情報通信ネットワークの構築状況や情報通信サービスの利用動向を把握している。